企業の中で起こっている2種類のパワハラと対策
この記事は、企業の中で起きている2種類のパワハラとその対策についての考えをまとめたものです。
パワハラは、本来は企業の目的から考えると非合理な行いですが、それが生じてしまう背景には企業の目的を達成するためにパワハラが合理的だと思い込んでいたり、権限を持っている人間が自分本位な思考で部下に接しているという状態が見受けられます。
このような状況について、人間の持っている欲求がどのようにパワハラにつながっていくのか説明したいと思います。

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動機から分類できる2種類のパワハラ

パワハラには、大きく分けると2種類の動機があり、そのいずれか、もしくは両方がパワハラを生む要因となっています。

1つ目は、仕事において成果を上げたい、部下に成果を上げさせたいという売上や利益を上げたいという達成欲求から生まれる動機です。
2つ目は、自分のパワー欲求を満たしたいという動機です。
この動機を持ってパワハラをしている人は、自分の動機には無自覚であることが多く、建前として自分の言動は仕事で成果を上げるためのものだと思っています。

「達成欲求」と「パワー欲求」は、アメリカの心理学者であるデイビッド・マクレランドが提唱した欲求理論の1つで、その他には「親和欲求」があります。

2つの動機とパワハラが無くならない理由

企業からパワハラを無くすのが難しいのは、上記で説明した2つの理由が関係していると感じています。

達成欲求によるパワハラ

達成欲求によってパワハラをしている人は、自分の言動が成果を上げることにつながると思い込んでいます。
パワハラは短期的には部下の行動力を促進することもあるので、上記のような思い込みが強くなってしまいます。
しかし長期的には、パワハラは部下の健康レベルを低下させ、行動力を低下させるため成果も出なくなっていきます。

達成欲求が動機になっているパワハラは、短期的には欲求が満たされてしまい、それが間違った成功体験になってしまうことでパワハラが続いてしまうという傾向があります。

パワー欲求によるパワハラ

人を動かすことによって自分の影響力が実感して満たされる欲求です。
適切な影響力で満たされる分には良いのですが、歪んだパワー欲求を持っている人は自分の言動で他人を支配下に置くことでパワー欲求を満たそうとします。

そのため相手が自分に従わないと不適切な言動はどんどん強くなっていき相手を追い詰めてしまいます。
しかし、本人はパワー欲求が一時的に満たされてしまうので、同じことを何度も繰り返してしまうのす。

このタイプの人が上司だった場合、成果を出すことよりもパワー欲求を満たすことを無意識に優先しているので、成果にはつながらない一貫性のない指示や嫌がらせような命令をされ、追い詰められてしまいます。

親和欲求が満たされる環境作りとパワハラ対策

人間の達成欲求もパワー欲求も適切な行動と結びつかせることができればいいのですが、それらを満たすことが優先されてしまうとパワハラが起こりやすくなります。
パワハラのない職場を作るためには、管理職や社歴の長い従業員が達成欲求とパワー欲求を満たすこと以上に従業員の親和欲求が満たされるように振舞うことが必要です。

心理的安全性の高い組織をつくる3つのマネジメント

親和欲求が満たされるということは、自分が大切にされていると感じたり、従業員同士の連帯感や協力体制があると感じることができたり、苦労も喜びも共有できる雰囲気があるような職場であると言えます。
このような職場は、心理的安全性が高いため従業員が思い切って仕事をすることができますし、意欲的な従業員が増えるでしょう。
より多くの従業員の親和欲求が高いほど組織の活動力は高まるため、結果的に達成欲求は満たされることになります。

私達は上記のような環境作りができるようコンサルティングを行うことがあります。
組織力を高めるためには、自分たちが何を目指しているのかという認知、目的達成のためにどう動く必要があるのかという行動、そして小さなことでも変化する感情の3つのマネジメントを行う必要があります。

認知、行動、感情のマネジメントができていると、パワハラが生じない心理的安全性の維持された組織となります。
私達のコンサルティングは、この3つのマネジメントができるように管理職の成長、一般社員のメンタルケア、ハラスメントの予防などを行っていきます。

パワー欲求で不適切な行動を取る人への対処

パワー欲求については、人を思うように動かしていることで満たすのではなく、適切なマネジメントができていることで満たされるようになることが望ましいと言えます。
従業員が自分の言うことを聴いて動くことに満足するのではなく、従業員が自ら考え、必要なサポートだけを周囲から得ながら生き生きと働いている姿を見て自分のマネジメント力を感じられるようになることを目指してほしいと思います。

しかし、パワー欲求を自分本位な動機で満たそうとする人が権限を持ったままでは大切な従業員が会社を離れる可能性が高くなってしまいます。
そのような場合は、一旦権限を小さくしたり、権限を持たないようにしてパワハラをしないように自己改善を図ってもらう必要があります。
私達は、パワー欲求を満たすためのパワハラをしてしまったという人にはコーチングという手段で改善の支援を行っています。

達成欲求によってパワハラをしていた人は、比較的3つのマネジメントを行う能力が身に付きやすいと言えますが、パワー欲求を満たすためのパワハラをしていた人は、一度欲求の自覚と行動のコントロールを身につける必要があります。
このように2種類のパワハラに応じて必要な心理支援を行っています。

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